葡萄酒はこうして造られる(その二)
さてさて、前回からの続き、今回は「鳥取の左です」でおなじみの島根県、その東部に位置する雲南市木次町の奥出雲葡萄園についてお送りします。
まず、ワイナリーに行く前に、このワイナリーの親会社 木次乳業さんへ、ここでパスチャライズド(低温殺菌)牛乳やチーズのお勉強です。ちゃんと見学コースもあって、本当に小学生の社会科見学のようです。後でココで作られているチーズを肴にワインのテイスティングがあるとの事、ご当地のチーズでご当地のワインを、こりゃたまらんのです。これが本当のスローフード。今回のツアーは日帰り版アグリツーリズモなのだ。
で、ついにワイナリーに到着です。
到着するや否や、ワイナリーの製造責任者、安部醸造長さんから畑の説明です。
見よ、この整然と作られたこの葡萄畑。日本の葡萄畑には珍しい立ち木栽培のこの樹形(普通、日本の葡萄園は棚栽培)、まるで本場のヨーロッパのようです。収穫後の画像なのですが、聞けば、葡萄の収量は、この今年伸びた徒長枝に、普通は二房、多くても三房までなのだそうです。
ちなみにこの畑は、葡萄品種で言えばシャルドネの畑。よく観察すれば、収穫されずにシワシワになった葡萄の小さな房が一つ枝に残っていました、それを一粒取って食べてみると、水分が抜けているせいもあって、とても糖度が高く、返り香がシャルドネのワインと同じ風味。ウヒヒッ!
除草剤を使わない(草刈機での草刈はされるそうです)ためと、土壌が栄養過多にならぬよう葡萄の木の周りはこんな感じで草が生えています。何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」で、養分は確かに必要なんですが、やりすぎは木を甘やかしてよくないのだ。果樹の世界でもハングリー精神のあるものが大成するのだ!!ったらなのだっ!!!
さてさて、終にワイナリー内部へ侵入です。
前日に紹介した、創業60余年のホージョーワインさんとは対照的な、明るくて新しいこの感じ、平成生まれのワイナリーの故なのですね。ここで赤・白・ロゼの醸造方法の説明を受けます。隣の部屋でコルク詰め等を経験して、ここでもワイナリーの要、地下の樽の貯蔵庫へ。
うぉ~!!!この光景、無性に興奮してきました。しかも見学コースのこのBGM、マイルズ・デイビスの「死刑台のエレベーター」がかかっています。たまらん、こんなアジト・・・秘密基地・・・欲しい・・・。
何と此処で嬉しい経験が、普段は絶対こんな事をしてもらえないのそうなのですが、このツアーの参加者の我々に、今、この樽の中で熟成中の赤(カベルネ・ソービニオン)と白(シャルドネ)ワインを試飲させていただく事になりました。ガラスの大きなピペットを使い、テイスティング・グラスに一口ずつのワインを注がれていきます。これもひとえに、このツアーの幹事、谷本酒店の若旦那のおかげです。
まだ出来上がる手前のワインの色はこんな感じです。白ワインの画像を見ていただくと良くわかると思いますが、まだ酵母が混ざっていて白濁しています。それと発酵中のため炭酸ガスがワイン内に溶けていて、舌先をピリピリと刺します。赤はタンニンがまだまだ強く「ニガニガ」した尖った渋味があります。この状態はとても美味しいと言える飲み物ではないのです。このオークの樽の中で熟成され、洗練されていくのです。
しかし、此処まで手をかけて、このワイナリーのほとんどのワイン値段が3000円/瓶以下っていうのは、本当にモトが取れているんでしょうか?お客の私が心配になります。
完成途中のワインのテイスティングの次は、勿論完成品のテイスティング。
そう、ちょっと遅くなりましたが、ランチと共にワインのテイスティングの時間がやってまいりました。
ちなみにこの日のランチプレートはこれです。12時方向から時計回りに紹介しますと、雲南舞茸をつかったコンソメロワイヤル(洋風茶碗蒸し)、サラダ、そば粉のクレープ雲南鶏巻き、木次乳業のチーズを使ったキッシュ、雲南豚の煮豚、自家製スモークサーモン、島根沖のメダイのソテー、豆腐の生姜ソース・クコの実添え、レンズマメのコロッケ、そして中心にあるのは、古代米を赤ワイン風味で。と、こんな感じです。ほとんどの食材が、フードマイレージの低い、この地の物で作られています。
これに2008年の新酒の赤と白、シャルドネの樽熟、山葡萄のワイン小公子、一緒にツアーに参加した皆様と楽しいおしゃべり、知らないうちに食事の時間の二時間が過ぎておりました。
今回のワイナリーツアーで私的にいたく感じ入ったのは、皆様が思っているようなワイン=高級といった小売単価では決して無い(普通で千円台、高級ワインで2千円台、限定の手のかかる醸造本数の少ないものでも3千円台。ご自身で商売やっている方だと小売でこの値段ちゅー事は卸は・・・わかりますよね)価格帯のものを、プラントで大量生産するわけでもなく、こじんまりと手の届く範囲で、ひたすらに自分たちの作るものに手を掛け、一言で言うと「労多くして益少なし」なのではないことこちらが心配になっちゃうような、だけども、自分の仕事に誇りと自信を持ち、それでいて謙虚で学びの心を失わず・・・なんだか宮沢賢治の文章みたいになっちゃいましたが、作り方を聞いたり、ワイナリーの見学も大切なのだけど、このような熱い作り手の方々に出合うことができたのが今回の「大人な社会科見学」の最大の収穫でした。
初めての場所に行き、その土地の美味しい物を飲んで食べて、その事を勉強して、その土地の人に会って話をして、同じ価値観を持った知り合い宴を囲み、楽しい日曜日でした。皆さん、人生はライブだ!家や身の回りの近場だけに閉じ篭るのはやめて、外へ出ましょう 。
ホージョーワイナリー、奥出雲葡萄園、木次乳業の皆様、そしてこのツアーの企画で幹事の谷本酒店の若旦那、本当にご馳走様でした。
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