耳を澄ませば
昨日のエントリーに引き続き、ちょっくら剣術のお話を引っ張ります。
さて、昨日の稽古始め、道場は我等が古流のためのみにあらず、剣道、薙刀、雖井蛙流、居合いと順番と、道場の使う場所を割り振られての稽古でした。
普段は我々のみで稽古をしているので、この度道場を分けて一緒に稽古した居合いの皆様の稽古風景をしっかりと観稽古でき、勉強になったのでした。
観稽古・・・ちょっと違いますね、この度参考になったのは、それは音です。
そもそも、江戸の昔には今のようなガラスを使った姿見と言われるような大きな鏡は存在しませんでした。昔の鑑は金属製の手鏡程度の大きさのものでした。
そうなると、今我々が行うような、姿見に映った自分の姿を見ながら、ちゃんとした振りが出来ているかどうか確認、こんな事が出来なかった訳です。では自分でどのように判断していたのか・・それは刀が空気を切る音のノートの高さで判断していたのです。
じっさい、居合い用、素振り稽古用の刀には、樋(「ひ」と読む)と呼ばれる溝が切ってあります。あれは血を流す為とか言う人がいらっしゃいますが、溝を切れば刀としての強度は落ち実戦になんて向きません、実戦用の人斬り包丁としての刀には、樋は切ってないのが普通です。では何のために樋が切ってあるのか、それは刀を振った時、風きり音が出易くする為なのです。
居合いをされている方々は、もちろん本身の居合い刀、それを居合いの型稽古で「ヒュ!ヒュ!」と風きり音を出されて振られています。
よ~く耳を澄ませば、上段者の方々は勿論、刀を振るフォームに余計な力が入っていなく美しく、刀が発する風きり音のノートも「ピュッ」といった高いノートがしています。肩に力の入ったフォームで力まかせに振られている方は「ブンッ」といった低いノート。
そう、この高い「ピュッ」と言った音を頼りに、昔の人は一人素振りの稽古をされたいたのです。
かく言う私も、やっと最近になって、樋も何にも切っていない木剣で「ピュッ」と言う音を出せるようになったのですが、この音を出せるようになって初めて本当に素振り時の音の違い、しいては稽古中の自分の剣の音、相手の音が聴き取れようになったのです。
そういえば・・・ロシナンテのキャブセッテイングでも、走行中のエンジン内の燃焼音、特にアトウッドの立ち上がり、上り坂四速全開時に、キャブをちょっと薄めにミスっちゃった時、「パリッ・・・・・パッ・・・・・パリッ・・・・・」って囁くデトネーション音が聞けるよう(「最もパワーを出す」って意味では、ちょっとデトネが出るのはジャストミートかも知れませんが、1シーズンで1セットのピストンを消費するようなレースはしたくないので・・・)になったのも、場数をこなして、AF計をチラ観しながら走行し、ピットインしてはプラグを見てキャブデータをためていった結果わかるようになったのです。レースを初めて間もない頃の昔は、いくらジンさんに「音がするでしょ」って言われてもその時は判りませんでした。(いくらなんでもノッキングが出るほど薄ければ、それはわかってましたよ・・・ヾ(´ε`*)ゝ)
そういえば・・・学生時代、夜学で通っていたアテネ・フランセでフランス語の母音矯正を受けた時、自分で発音できるようになって初めて、その違いを聴き取れるようになったっけ・・・遠い目
物事の根っこは繋がっているんですねぇ~ホンマ(シミジミ)。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
なかなか興味深いお話ですね。
抜刀術(居合道)に関しては、私も囓った身ですから
少々解りますが、流石に樋の無い刀は振っていません。
空気を着る音は樋があっても無くても腕によって音が違いましたし
僕の師匠は真剣で樋がありましたが、僕らの刀の音よりも高くシャープでした。
抜刀術を離れて既に30年ですが、まだその感覚だけは残っています。
久しぶりに刀を振りたくなりました。
今年の目標に入れましょうかね・・・
投稿: 沢庵和尚 | 2010年1月 3日 (日) 23時45分
沢庵和尚さま
>今年の目標に入れましょうかね・・・
是非!
来たれモトラボロ剣術部!ちがうか。
投稿: 松永 | 2010年1月 4日 (月) 23時33分