行ってまいりました、MVのサーキット走行会。これ迄、フジ・スピードウェイには何度も来る機会があったのですが、ショートコースで行われたのクラッシクレースの応援だったり、去年は友人のお供として来ていたので、実は自分ので走るのは初めてだったのだ!
心配していたフジの天気も晴天に恵まれ、絶好のサーキット日和となりました。
こうなると気持ちは遠足前の小学生状態。ゲートオープンが7:00、ピットを早めに押さえる必要も無いのに、なぜか5:30にはゲート前駐車場にいてます。だって~興奮して、居ても発ってもいられなかったのだ。
そうこうしていると、クラシックな125sportを積んだトランポが、隣の駐車スペースに停まりました。デュアルバランスのお方々。お互いにクラシック・バイクの事でゲート開門までに一盛り上がり。そして初見であったのにもかかわらず、この日は本当に良くしていただきました。ありがとうございます。
パドック内でデュアルバランスさんの125と、私の750を並べてみました。同じ時期に作られた姉妹、そこかしこの意匠がそっくりなのがよくわかりますね。
をぉ、750SPRでU野さん登場です。一年ぶりの再会。AGVのROSSIヘルメットが眩しいです。
二人してパドックをうろうろ。例のアレがありました。
例のアレって?
最近巷を騒がせている例のアレです。

MV agustaの500GPレーサーのレプリカです。
「バオバオ」言っています。私のバイクも五月蠅いので、今回の騒音規制の有る走行会で大丈夫かなぁ~と心配していたのですが、このマシンのウォームアップ時のノートを耳にして「これがOKなら全然大丈夫!」と変な自信が持てました。(笑)
このマシンのウォームアップを眺めていると、丁度クラッシックMV界のドン・コルレオーネと私が勝手に思っておりますT名人ご登場であります。私は日本でこれほど旧いMV Agustaに情熱を注がれてる方は他に拝見した事が無い。「そのまま西風の漫画に出てきてもおかしくない」そのような御仁です。
T名人、今回はご友人と、三台のクラシック・アグスタを持ってのご参加です。本当にたまらんです。その内の一台はMAGNI(マグニ)と書いてマーニと読む、マーニ製テライオ・コルサ(レーシング・フレーム)にチェーンドライブ、乾式クラッチを組み込み、もちろんカーブドマフラー装着です。外装は叩きのアルミタンク、レース用のシートカウルがついています。カウリングはただ今塗装中だそうで、今回はネイキッドスタイルでの走行になるとのことでした。それにしてもすげぇ・・・。
おっとりがたなで、私のライディングの師匠1000アゴスチーニを駆る、北さんも登場です。皆と再会を喜び談笑していると、直ぐにブリーフィングの時間です。北さん到着時間ギリギリすぎw。
ブリーフィングを受けると、なんと100台のエントリー。それをA組、B組に分けて走行です。速さで分けたの?そうじゃないみたいです。ちょっとヤバイ・・・クラシックは私と、T名人、T名人のご友人、そして500のGPレーサーだけだ・・・。
クラシック組は仲良くA組です。
一番最後の方でT名人についてピットアウトです。半周ついていくとT名人やります。モダンなMVを数台かわし前に前に出て行きます。
一周していると私にピットインのボードがコーナーポストから出されています。
ピットに入るとオフィッシャルから「マフラーから少し紫煙が出ています」とのこと。
「この時代(1974年製)のMVは、4サイクルでもちょっとオイルを喰わせながら走るようにクリアランスがでかいんですよ、それでだと思います。エンジン周りにオイル漏れとあります?」と答えれば(前日までにジンさんがサーキット走行が出来るように、ちゃんとチェックしてくれているので自信有り)、エンジンの下回りやカウリングから覗いている部分をオイル漏れが無いかチェックされ、アイドリング時にエキパイから煙が出ていないのを見て「わかりました大丈夫です。それじゃ気をつけて続けて走ってくださいと」OKが出ました。
再びピットアウト、大丈夫と言っても34年前のマシンなので、いたわりながら丁寧に走ります。
さてフジの長が~い直線です。アクセル全開で行きます。
やっぱりです・・・来ました・・・160km/hくらいからブルブル車体が振れ出します。ニーグリップをしっかりしながら180km/hまで耐えましたが、命の危険を感じたのでこの辺で折り合いをつけてアクセルオフ・・・ギャーッ!!!アクセルを閉じると尚更振れの振幅が激しいです。
旧いノーマルのMVってこんなもんです。だってフレームがダブルループなだけでバックボーンが入ってないのだ。
シフトアップ時、クラッチ切る同時にアクセルオフ→ペダルをシフトアップ→クラッチつなぐアクセルオン。この動作のアクセルオンのパワーをかけた時に、エンジンの搭載位置が「グニャ」って時計回りに動くような挙動が出るんです(涙)。
そんなこんなで怖い思いしながら減速を無事済ませ、1コーナーを走り高速の右、それに続くコカコーラコーナー、ここでT名人に抜かれます。
凄いです。T名人、ステップすりながらのコーナリング。テライオ・コルサ恐るべし。屁垂れの私は自分のMVであのような走行できません。(キッパリ)
そのまま数周して、ちょっと早めに一枠目は切り上げます。ピットにマシンを止め、マシンの下回りにオイル漏れが無いか、もう一度エンジンを掛けてみてレーシングしながらエキパイからの煙の具合を自分の目で確認です。オイル漏れも無し、エキパイの感じも今迄通り問題ありません。
そうこうしているとT名人も帰ってこられました。直ぐにT名人の所へ赴き、車体の振れについて報告すると。「ノーマルフレームは仕方が無い」と一言。それに食い下がって「加速時の振れよりも、減速時振れの方がおっかないんですけど?」と続ければ。「これって本当に仕方がないんですよね。この前スパ・フランコルシャンのミーティングでも松永君のと同じようなアメリカに乗ったけど、それも酷かったもん。だから松永君だけがそうじゃなくて、そんなもんです。まあその振れ小さくするには、こうこうこうすればいいんですよ。でもそれを今ココでどうこうできる事じゃないので、減速時にいつもより強めにリアブレーキを使ってみて下さい、さっきよりマシなると思います」とのありがたい名人のお言葉。
そしてピットウォールに行きB組のU野さんのライディングを観察です。750SPRは1000ccのモデルよりも甲高い澄んだ排気音をしています。1000ccのモデルよりもレヴが1000rpmは高い感じの音です、走行が終わったU野さんにその事を告げると、13,000rpmは回るよとの事でした。北さんのアゴスチーニが12,000rpmちょいでリミッターが掛かるので、このU野さんの750が如何に高回転型か、そりゃ美しい声で歌うんです。マーレーの鍛造ピストン最高!
私の二回目にして、この日最後のフジの走行枠が始まります。コースインまで振動をどうするかと色々な事を考え、過去の記憶の引き出しを開いたり閉まったりします。妄想柴田さんが出てきて「振れるのはアクセル開けきらんからたい。共振点を超えたら振動は無くなろーが」と福岡弁で、かつてPOP吉村が柴田さんに言われた事を私に言います。
コースインが始まりました。
一周目、ストレートでやはり振れます。
二周目、前述の妄想柴田さんの言葉通り頑張って190km/h出しますが一向に振動は収まりません。
う~む・・・バックボーンが無いから振れるのか!そうなのか!それじゃ取引だ!私の背骨を貸してやる。私の両の腕(かいな)は背骨から伸びて車体につながるサブフレーム、毎日200kgを上げて鍛え上げたハムストリングス筋群を持つ両脚はスイングアーム・ピボット補強する補強材だ!・・・百鬼丸か私?。私の身体をこれだけ供出するんだから、メーター読みで200km/h!人馬共々いってみよう!
三周目最終を立ち上がり四周目に入るメインストレート。できる限りタンクに伏せ、顎はタンクの上、ドカベン山田太郎のように大きな身体を出来るだけ小さく折りたたみ、フロントカウルとスクリーンに完全に身体を入れ、下半身は出来る限りの力でニーグリップ。肘でもタンクを締め上げ、自分自身の身体を剛性の足らない車体の剛体として質入です。周りのモダンなマシン(一緒に走っている周りのモダンなMVは、270とか280km/hとか言っている。その差100km/h弱)に追突されないように、ピットよりのラインで走行です。
顎の下、燃料タンクの更に下、エンジン内部のギアトレインユニットの高速で回転するギアの唸り音がヘルメットの中で反響します。壊れそうで怖ひ・・・。
「ブルブルブル」ネック周りが振動しています。回転計と速度計の針が進んできます。速度計の針が細かくぶれながら200km/hへ。「たかだか200km/hの速度で、振動に悩まされながら音速に挑んだイエガーの気持ちになれるなんて・・・」スクリーン越しのコースを見ながら、一人そんなことを考えたりしています。
「もうちょっと・・・耐えろ、もうちょっと・・・」自分の勇気と、車体の振動から来る恐怖心を天秤にかけて、何処で降りるか一人チキンゲームです。細かくぶれる速度計の針が200km/hを指し示し始めました。まだです。針のぶれの下端が200km/hとなるまで我慢で頑張るのだ。
ウワァァォォ~ンッ!!+ギャヒ~ンッ(ギアトレインの唸り音)!!
来ました200km/h!さて此処からが問題です。なるべく激しい挙動変化が無いように減速しなければなりません。でもやっぱり振られます。こわ~。
ヘルメット中で「まだ・・・まだ・・・ギャー止まれーラインはそのままーっ!!!」とか叫びながら、こんな事をチェッカーが出るまで数周行いました。
旧い道具をそれなりに使うのは、道具とそれを使う人間のキャパの範疇を越えないギリギリの処に薄紙を剥がすがごとく近付いて行く行為で、その道具が作られた時代なりレベルの限界へ挑戦していく醍醐味は、リスクを背負う分だけ出来た時はそれでまた本当に面白いものです。サーキットじゃなきゃこんな事できないですよね。
走行後の昼食時、「200km/hこのマシンで初めて出した~。でも命のスペアが二つくらい欲しい経験だったので、もうお腹いっぱい~ギャハハハハッ!!」と、仲間とテーブルを囲みながら笑って終われた事が何よりでした。
自走組のU野さんを見送り、お隣さんでお世話になったデュアルバランス皆様に「お先に失礼します」の別れの挨拶をし、T名人には9月にまたこのフジでと再会の約束、そしてトランポを並べサーキットを北さんと一緒に後にしました。御殿場ICまでの裏道を北さんの先導でひた走ります。ICの第一入り口付近で先行する北さんがハザードを焚いて「サヨ~ナラ~」のサイン。北さんはそのまま直進し東京方面の第二入り口へ、私は右折しこの第一入り口へ・・・この時15:00前。
楽しいことの後には大変な事がある。世の中それで調和が取れている。前日のエントリーに書きましたように、これより翌1:00迄の時間をかけた、自宅へ帰り道、事故渋滞との我慢比べが始まったのです・・・・。
そしてその中、思わず「二度目見」をしてしまうオモローな事が起きました・・・それはまた別のお話・・・。
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