« 信号戦隊モトラボロン | トップページ | 神経衰弱ギリギリの帰還 »

2007年8月22日 (水)

熱いアスファルトの上の馬鹿達

 昨日のつづき。

  「バゥッ・・ボボボボボッ」アイドリングしながら左右に揺れるマシンに跨り、練習走行枠のチケットを左手に握り締め、コースインに備えます。 チケットをコースイン・コントロール・マーシャルに渡し、ピットロードへ入ります。そこで二列縦隊に整列、ピットロード出口、旗を持ったオフィシャルが腕時計を見ながらコースインのカウントダウン、時間です。

 二列縦隊していた左右の一台づつの車両が、オフィシャルのそれぞれ両手に持った黄色い旗が上がるの確認しながら交互にコースインです。

 P-LAP(タイム自動計測器)の起動OK、コースイン直後の1コーナーはインインで・・・S字でアクセルを開けていきます。レース前に岡山のモトレヴォの時に付けていたハンドルはちょっとよろしくなかったので、転倒前の元のハンドルに戻した具合は?をぉっ、前輪荷重がちゃんと乗って曲がり易い。ただ前輪荷重をもっと稼ごうと広げて付けたハンドル角は広げすぎだ、最終コーナーでライディングポジションに無理がある。予選までにポジションをちょっと絞ろう。ただやっぱりこのハンドルはちょっと遠いな・・・この辺はレース後要改善。キャブは・・・あれだけ薄目に調整してきたのに、この気温、まだちょい濃い目だね・・・、新しいピレリのタイヤは本当にハンドリングが良いなぁ~と、まあこんなことを一つ一つ確認しながら走行していきます。今履いているタイヤをずっと使う予定でしたので、マシンの確認が終わるとタイヤを温存してピットイン。汗が引くのを待って、先ほどの問題点、ハンドルの開きと、キャブの確認をして、左シリンダーのキャブのみ、メインをちょっと絞りました。そうMOTO GUZZIはコンロッドの厚み分、左右のシリンダーが前後にオフセットしているため、排気管長に微妙な差があり、そのおかげでキャブレーションもそれぞれ違ってくるのだ。

 そんなこんなで予選です。第一ライダーと第二ライダーが交代で走って、そのタイムの良い方が予選結果となります。これは第一ライダーの塩川選手に任せて、交代後さっきの調整の確認をします。をぉぉぉ良いじゃん。マシンの状態が良いので試してみたい事をやってみます。最終コーナーを今までは最初のクリップに付かないで、ミドルで我慢して最後にクリップをかすめる、そんなコーナリングをしていたのですが、ここは速い選手がやっている、最初に一度クリップについて一度ミドルに振り、もう一度向きをかえて立ち上がりのクリップをかすめながらアクセルオン、人呼んで「高速の二段階右折」これをやってみようと練習なのだ。

 中々上手く行かず、「あじゃーもっとこっち・・・」なんてソーイングまがいの事をやっていたら、予選後りゅーぢ選手から「松永さん、最終コーナー悩んでたでしょ・・・三回くらいクリップについてたよね(笑)」と、たはっ!見られてた・・・恥ずかし(ポッ)。

 そんなことをしていると、目の前にハイパーモタード発見・・・って、コーナリング中、ステップが接地して火花出てます。最終コーナーでバンクしてステップが接地、火花散る、マシン起こす、又寝かす、火花散る、又起こす・・・なんだか辛そうです。

 予選も終わり、あとは午後からの決勝を残すばかり、予選結果は塩川選手のスーパーラップのおかげで四番手。決勝までの間、ジンさん「耐久は淡々と走ってコースに残っていれば結果が出ます。ココ一発じゃなくて、続けてコンスタント出せる一番良いタイムで周回しましょう。」とアドヴァイスが入ります。ジンさんマジです。なにか狙っています。

 ライダーズブリーフィングも終わり、決勝レースです。

 第二ライダーの私はルマン式のスタート時、ライディング時と同じ完全装備で、マシンの支えをしなくてはいけません。着替え時、ブーツを履こうと、靴下のまま日向の路面に足を着いた時です、あまりの熱さに「あちっあちっ」っとピョンピョン跳ねちゃいました。靴下を履いててですよ、あ~こんな環境で三時間耐久レースをする我々って馬鹿? 

 スターティンググリッドで待っていると、帰ってきました塩川選手、一番乗りです。マシンを預かり、塩川選手はコースの対岸、ライダーズサークルへ、スタート練習後、本番スタートです。

 カウントダウンが始まります。9・8・7・5・4・3・2・1スタートッ!

 ライダーズサークルから走ってくる塩川選手、マシンに飛び乗りエンジンスタート、クラッチをミートして矢のように1コーナーに消えていきます。それを見届けチームテントに戻ってヘルメットを脱ぎます。玉の汗です・・・走る前から大丈夫でしょうか私・・・不測の事態に備えマシンの準備をしピットロードに並べます。今回はリレー耐久、トランスポンダーがバトンの代わりになります。放送で「塩川選手四位ですっ!」との放送、プレッシャーが襲ってきました。30分が経ちライダー交代の時間です。スタンドを外しマシンに跨り、起動用バッテリーを繋ぎ、塩川選手のピットインを待ちます。来ました。福永メカがトランスポンダーを手早く、塩川号からロシナンテへ付け替えてくれます。エンジン始動、バッテリーのジャックOFFの確認にお尻を「ポン」と叩かれスタートです。

Tukuba1  自分のノルマ1分10秒でコンスタントに周回する事を目指して、走ります・・・あ~他車に絡むと2秒ロスします。クリアだとちゃんと走れます。それでもペースの速い組に抜かれていきます。根本選手の駆るポールスマートに抜かれました。これにちょっとでも付いていこうと必死に追いすがりますが、最終コーナーで「えぇ・・・ココから開けていくの根本さん!!!」てな感じで最終の上がりで突き放されます・・・さすが元GPライダー、格が違いました。何とか一回目30分の走行を無事に終わりジンさんへバトンタッチ、少し順位を落としてジンさんがコースへ飛び出していきます。

 扇風機の前でうなだれる私、氷を首筋に当て、脳に流れる血流を冷やします。それと同時にエネルゲン補給。そうしていると、私を抜いたポールスマートがガス欠で止まっているとの放送。ライダーの山口社長、コース脇で必死にマシンを押されてピットに向かわれています。水冷のクラスの1098もピットでなにやらトラブルのようです。

 他チームがトラブルで出遅れている間に、ジンさんは言葉通り淡々とタイムを刻んで行きます。そしてジンさんピットイン。ライダー交代二周り目に突入です。チームテントで涼んでいるジンさん、着替えを始めた私に「いや~自己ベストの6秒に入れようと思ったけど、ズリッってきて危なかった、コンスタントに8秒、頑張って7秒で、5台くらい抜いたから良い線いけると思うよ。松永君はさっきのペースでいいから黙々と走る事、みんな暑さでたれて来ているからタイム出ていません。十分チャンスがある」と。再び走行です。二度目は周りが見えています。抜かれた車両はコルセのビモータと、スタンホープのマシン、BABIE’sの999Rだけです。ひたすらに転けないように丁寧に、気を抜かず30分の走行をします。

 最後のライダーチェンジ、ジンさん飛び出して行きます。塩川選手は「ジンさんに何かあるといけないので」と革ツナギに袖を通しています。電光掲示板には総合五位、空冷クラス三位の位置に#2の文字。前に居るのはりゅーぢ選手のDB5、スタンホープ西田代表のMHe、BABIE’sの999R、チーム3/4の998です。しかし我々の五分後にハイパーモタードが迫ってきています。

 第一ヘアピンでレースの成り行きを見ていると、ジンさんの1100ブレーヴァが「バンッ・・・バンッ・・・」とミスファイアを起こしながらスローダウン!!!塩川選手の備えが布石として効きました。なんとか自走して帰ってくるジンさん、残り15分走行できる5Lのガソリンを給油しピットアウトする塩川号、チームテントの後ろではハイパーモタードのチーム員bansan選手が「頼む、もうちょっと停まってってくれ~」と叫ばれてます。1100ブレーヴァ、電気系のトラブルがでたようです。

 塩川選手、ラスト15分、スプリント並みにとばします。総合五位、クラス三位をなんとしても死守するつもりです。ただバッテリーが、体内電池残量のカウントダウンが始まったエヴァンゲリオンのようにギリギリです。「電池もってくれ~」と、待つ身としては永遠のような永さの15分です。

 そして終にチェッカー!!!

 我々モトラボロR.Tは総合五位、空冷クラス三位でチャッカーを受けたのでした。

20070819161721  そしてポディウム、皆でシャンパンファイトです。

 空冷クラス、優勝モトコルセ、二位スタンホープレーシング、三位モトラボロR.Tとなりました。

 ジンさん久々にうれしそうです。そして「松永君、来年までにコンスタントに出せるタイムを2秒UPね」と仰せつかりました。来年もですか・・・。メッチャ辛いです真夏の耐久。

 それにしても皆、顔を真っ赤に日焼けして満足気です。厳しい転倒も無く。コースもクリアな時が多く、厳しいなりにも楽しめたのも事実です。

20070819162555  戦い終わって、マシン達も一休みです。

 さ~てさて、これにて真夏の三時間耐久は無事終わりました。

 しかし、私には、この耐久よりも厳しい家路までの800km超のドライブが待っていたのです。この時にはどんな事が待っているなんて夢にも思わず、ただただ三位という思っても見なかった好成績にはしゃいでいました。

 そのお話は、明日のエントリー「神経衰弱ギリギリの帰還」へ続くのであった。 

|

« 信号戦隊モトラボロン | トップページ | 神経衰弱ギリギリの帰還 »

コメント

読み応えありますね~。

並み居るドカを抑えての表彰台、素晴らしい。
おめでとうございます!
良いイメージのままSUGOもやっちゃってください!

投稿: rev | 2007年8月22日 (水) 11時28分

ガッツリ読ませて頂きました

おぉぉぉぉぉぉぉ!って感じで読み終えると若干興奮気味です

おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

2回読みました

投稿: 番長ドリー | 2007年8月22日 (水) 12時50分

お疲れ様でした。耐久レースは一回だけしかやったこと無いですが、体力を持続しながらコンスタントに「速く」走るのって難しいですよね~。ベテランの耐久レーサーは尊敬しちゃいます。Guzziで3位素晴らしいです!

投稿: ゲル | 2007年8月22日 (水) 23時21分

revさま
>良いイメージのままSUGOもやっちゃってください!
一ヶ月以上もテンション続きません・・・
いや~こう見えても、僕ぁ~繊細だからなぁ~。

番長ドリーさま
そんなに大っぴらに「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」なんて叫ばれると、アルピナ使いの御仁に嫉妬されるので、こっそりお願いします。(笑)

ゲルさま
そう、GUZZIでお立ち台ってのが重要なんです。
我々GUZZI馬鹿は。

投稿: 松永 | 2007年8月22日 (水) 23時43分

つい先日白馬でコースアウトしたBMWを宿でありあわせの工具で直されていた
ジンさん。凄い方ですね〜。頭が下がります。

投稿: VERTICAL | 2007年8月23日 (木) 00時23分

暑い暑い暑い暑いんだよおおおお壊

投稿: massimo | 2007年8月23日 (木) 21時49分

>暑い暑い暑い暑いんだよおおおお壊
解かりました。
massimo技術長のツナギ、私が模型用に買っている革のポンチで一個づつ穴をポンチしてパンチングメッシュにするって言うのは・・・?
・・・・駄目ですよね。

投稿: 松永 | 2007年8月23日 (木) 22時16分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 熱いアスファルトの上の馬鹿達:

« 信号戦隊モトラボロン | トップページ | 神経衰弱ギリギリの帰還 »