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2005年8月21日 (日)

神は細部に・・・

 この前の記事に書いたDVDの第一段、ボクシング映画“レイジング・ブル アルティメット・エデション”が昨日届いた。

 昨日は町内の納涼祭で、町の子供たち相手にテキヤの兄ちゃんの様な仕事をし、片付け等が終わったのがPM10:30、へとへとであったのですが風呂に入りさっぱりとして、PM11:00より普通に鑑賞。今日はいつものようにAM4:30に目が覚めたのだが、あいにくの雨で朝練ができない。なので朝練の代わりに、今回は副音声のスコセッシ監督のコメンタリー付きで鑑賞する。

 この映画で、かねてよりどうしても確認したい事があったからだ。それについて監督が何か言っているのではと期待したのです。

 それは映画が始まってから32分11秒~29秒の18秒間のショットについてです。そのショットについて説明しましょう。

 シュガー・レイ・ロビンソンと怒れる牡牛(レイジング・ブル)ことジェイク・ラモッタの第二戦、ラモッタがシュガー・レイ・ロビンソンからダウンを奪うところからです。デニーロ演じるラモッタがこちらを向いたままニュートラルコーナーに下がり、そこからリングの端を時計回りに動きながら、ダウンから立ち上がった相手に向かっていくまでの18秒。

 ただの18秒と思う無かれ、その中で時間圧縮が起こるのです。ニュートラルコーナーに下がり始めるあたりは普通のスピードです。そこからスローになり相手に向かい始めるあたりで又スピードが上がりスローから普通のスピードに戻ります。

 その事について監督は「ラボで加工などしていない。カメラの回転スピードを変えた。」と。

 絶句である・・・何が絶句かって。監督の言っていることが本当ならば、途中でシャッタースピードが変わっているのに普通に画面が流れているんですよ・・・マニュアルのカメラをかじった事のある人は解るはずです。スロー撮影にすると言う事は今までよりシャッタースピードを上げなきゃいけません、すると露出も今までのままでは足りなくなるので絞りを開く、それとも照明を強くするのか、絞りを開くと焦点深度が変わるのでピントも変わるはず、照明が変われば影とかに粗が出ているかも・・・。なのにこの映画のこのワンショットは何事も無かったように、ただ時間軸が普通のスピード→スロー→再び普通のスピードとなるだけである。

 DVD鑑賞の特権で、このシーンを私の持つDVDプレーヤーで、できる限りのスロー再生をしてじっくりと確認してみた。やはり何事もおきない。ばっちりピンの合ったちょっと巻き毛かかったデニーロの髪の毛、動く筋肉の影が作り出す微妙なグラディエーション、リングの向こうで試合を見守るわざとちょっとピントのはずされた観客の顔・・・微塵の破綻も起すことなく事が進むのです。匠の技に溜息しか出ません。

 作り手の魂がフィルムという名のケージの中に閉じ込められているような映画です。

 こういった映画見ないでどんな映画見るんです?

 

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コメント

ふと気が付いた・・・
上記のショット、最初と終わりの部分の演技を、デニーロに仕上がりのスピードより速めのテンポで演技をさせて、カメラはずっと高速度撮影ってのもありかな・・・と。
しっかりとしたカメリハをすれば可能ですよね。
コロンブスの卵的では有りますが・・・。
でもそうなるとスコセッシの解説は・・・?
謎は謎のままの方が良いのでしょうか?

投稿: 松永 | 2005年8月22日 (月) 16時17分

見てないので想像ではありますが・・・。

昔、日活ロマンポルノのカメラスタッフは、女性の身体に沿って舐めたアングルで撮影する時なんか、カメラマンが手持ちでカメラ持って、チーフアシスタントは一緒に動きながら、被写体からの距離を目測で読んで、カンでピンを随時合わせていました。予算が無いので無駄なフィルムは回しません。少ないテイクでの勝負です。まさに職人技です。

ハリウッドはもっと予算と設備があると思うので、綿密なリハでデータをとって機械的に制御でもしているのではないでしょうか?

投稿: kuwa | 2005年8月22日 (月) 17時48分

内容をみて久しぶりに「マスターオブライト」(フィルムアート社)をめくってみた。
このカメラはマイケルチャップマンでタクシードライバーも撮ってるね。記事によるとカメラに可変抵抗をつけてコマ数を変化させたらしい。合わせてライティングの光量変化も指示して撮ったとのコメントあり。しかもドリーや手持ち撮影だったのでかなり計算して撮ったってコメントしてたよ。
やっぱハリウッドは凄いね。
もっとイロイロ書いてあるから久しぶりに読んでみようかな。

投稿: 海苔 | 2005年8月24日 (水) 01時28分

海苔 さま
的確な回答さすがです。
演技ではなく、やはりカメラ、照明で光量変化を管理していたのですね。
何度もカメリハしたんだろうな、18秒のために・・・
やはり凄い映画だ!

投稿: 松永 | 2005年8月24日 (水) 08時40分

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