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2005年8月10日 (水)

速いからや

「松永選手は、なんでMOTO GUZZIでレースやっとるん?」

 今からさかのぼる事、もう4~5年前になるだろうか。その当時、私が出走しているレースクラスACT(Air Cooled Twinつまり空冷二気筒エンジンのバイク)クラスの常勝ライダー、愛媛の阿部さんの質問です。岡山のTIサーキット(今は名前が変わって岡山国際サーキット)で氏はMOTO GUZZI使いとして、敵無しの時期でありました。

 私が答えに困っていると、「『速いからや』って答えんでどうする!」と笑いながらも目は真剣です。そしてこう続けられたのです。

「音楽で100万枚とか200万枚売れているドーデモいい曲が世の中には仰山さんある。一方、年間何枚売れているのっていうJAZZも片方である。どう考えても商業的にはJAZZの完敗や。でもなんで、そのJAZZがこの世から無くならないで今なお評価され続けていられるのは、それは音楽的な本質がちゃんとしてるからとちゃうかな。音楽性の実験とその実践で、音楽の一番先っぽのエッジの部分で今なお歩みを止めず、進歩しているのがJAZZ、しかもBeBopやで」

「それと同じでレーシングマシンの本質は何や?そう『速さ』やろ。『好きです』って理由もええけど、こんなけったいなオートバイでレースしてて、このマシンが『好きです』なんて動機はあたりまえやん、普通の人とは違う選択をしているからこそなお、その物の本質、『速いからや』と答えられへんとあかんのと違うかな?」

 その時の私は現在の私ほどまだレースに対してハングリーでなく、ましてや速くも無く、自分に問いかけてもらっているのに、ただ「この人すごい人だぁ~。ちょっと自分とは次元の違う話だ」と距離をおいて聞いていた処があの時はあったなと、今現在になって気が付き、もっとはやく解っていればと後悔の日々です。この会話中、「この本読めば速よなるわいっ」と紹介されたのが“そして、風が走りぬけて行った-天才ジャズピアニスト・守安祥太郎の生涯”という本です。

 ・・・何度も読み返しました。しかも頻繁に読むようになったのは、やはり去年の転倒後からです、レースが近くなるときまって枕元に置き、寝る前に読むのです。何度も何度も・・・

 この話の後しばらくして、阿部さんはサンデーレースをきっぱりと止められました。アルトサックスを精進されていると伝え聞いています。今でもたまに電話すると開口一番「松永選手、コルトレーン聴いてるか?BeBopは理解できたか?」と・・・。

 私の答えは「まだまだ僕には解りません」

 かつてこのBlogに真っ暗な道を照らしてくれる人の記事を書きました。私は阿部さんにレースを引退されてから直接会ってはいませんが、私にとって未だしっかりと道を照らしてくれている一人なのです。

 最近やっと他の人から「いやー松永さん、最近速よなったよねぇ~」と言われるようになってきました。

 私は「もともとGUZZIは速かったんですけど、ライダーが屁たれだったんですわ。でも自分的にはまだまだです」(未だBeBopを理解して無いように(心の声))と答える。

 そうMOTO GUZZIは速いのである

PS:もう一冊、レースが近くなると読まずにはいられない本があります。サン・テクジュペリの“夜間飛行”です。 やはり私は気が弱いのですね・・・。レース前には、この二冊の依存症となるのです。

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コメント

ビバップを例にしての本質の話、名言ですな。

私が求めているも正にその辺にあり
時代の中での全ての事象が師匠でありライバル。
勝負の相手は目先の軽業師ではなく
己の中で覚醒させねばならぬヘビー級の自己解放。

投稿: zuka | 2005年8月10日 (水) 04時05分

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